HERO'Sではブラック・マンバにKO負けを喫し、ホームリングのZSTでは勝村周一朗の前に失神。昨年、一夜にしてヒーローの座をつかんだ所英男が、もがき苦しんでいる。はやる気持ちとは裏腹に、出てくる結果は無残なものばかり。さすがに勝村戦のあとは「落ちるところまで落ちた」と、心の中の何かがプツリと切れたという。

 だが、元来が負けず嫌いの性分である。「このまま終わったら絶対に後悔する」との思いにかられた所は、6月中旬から練習を再開。そして再び輝きを取り戻すべく、7月中旬(10日〜18日)には打撃のレベルアップを目的としたボクシング合宿も敢行した。

 場所はアンディ・フグの生前の練習場所としても知られる『平仲ボクシングスクールジム』。ジムの二階にある合宿所に住み込み、一日中ボクシング漬けの毎日を送ったという。
「ディフェンスもオフェンスも課題があったので沖縄へ行きました。一週間程度の練習ではすぐに結果は出ないと思いますけど、今回練習したことを反復して今後に役立てたいですね。とりあえず落ちるところまで落ちたので、気持ち的には楽になりました。あとは這い上がるだけ。そう思ったら練習も楽しくなってきました。一時期、試合結果を意識した練習をしすぎて楽しめない時期もあったんですけど、今は純粋に楽しいです」

 そんな折り、思わぬ吉報が所のもとに届いた。山本“KID”徳郁、須藤元気の欠場により、世界最強決定トーナメントの出場が決定。「運も実力のうち」とはよく言ったもので、輝きを取り戻す機会が向こうの方から近づいてきた。
「いつ棚からボタ餅がきてもいいように練習していたのでラッキーですね。正直、一回戦でKO負けしているので何を言われるか分からないですけど、そこはチャンスなんで貪欲にいきたいです。もう野球のWBCじゃないですけど、ドサクサに紛れて優勝できたらって思ってますね」

 所が準々決勝で対戦するのは開幕戦で中原太陽を破り、その実力を満天下に示したアイヴァン・メンジバー。マンバと同じく打撃を得意としている選手だが、当の所は必要以上にナーバスにはなっていない。
「なんかメキシコで、プロレスをやっていた選手なんですよね。すごい身体能力が高くて、打撃もできるし、スープレックスもできると。あとは極めができれば、UWFみたいだなって思います(苦笑)。開幕戦を見てパンチとヒザがすごく強い感じがしたので、不用意にもらわないように注意しつつ、そういう中で一本を狙う試合をしたいですね。プレッシャー? いや、もう今は楽しんでノビノビと試合をして、そういう姿を(投票で)選んでくれた人たちに観てもらいたいです。いろいろと攻守が入れ替わるようないい試合ができればいいなと思いますね」

 早いもので、人生を変えたアレッシャンドリ・フランカ・ノゲイラ戦から約1年が経過した。仮にそこで敗れていれば、所がここまで驚異的なスピードでブレイクすることはなかっただろう。だが、彼は誰もが予想しえなかったKOという形で自らの大ブレイクを演出。ポカは多いが、大一番で神がかり的な強さを発揮する、という神通力は健在だった。それだけに今回も“棚からぼた餅”という声を掻き消すだけのインパクトを残す予感は大である。

「ペケーニョ戦から1年? ああ、そうですよね。何もかもがガラっと変わった1年でした。こんな1年は、もうないでしょうね。でも浮かれるくらいに、もっと変わりたいです。一回でいいから、すごい扱いを受けたりしてみたいですから」

 身の丈以上の扱いを受けたことで「自分を見失った時期もあった」というが、「この1年を振り返って」という質問を振ると、上記のようなコメントをさらりと返してきた。となれば「精神的に追い詰められているのでは?」という心配は無用。メンタル的にも一回り大きくなった所が、再び輝きを取り戻す日もそう遠くはないだろう。■



>>『Sammy Presents HERO'S 2006 ミドル&ライトヘビー級世界最強王者決定トーナメント準々決勝』実施概要

元ボクシング世界王者・平仲明信氏のマンツーマン指導を受ける所。今回の合宿では入り際、去り際のショートパンチを徹底的に反復したという


所は先に沖縄入りしていたボビー・オロゴンともスパーをおこなったとのこと。「1Rだけやらせてもらいましたけど、全然、相手にならなかったですね。無茶苦茶、強いです」

「所はいいよ。4日目からは日本ライト級8位まで上がった選手とのスパーにも着いてこれるようになったからね」(平仲会長)

ジムの玄関先にあるシーサーを見つけた所は、おもむろに「ガーッ!」
ちなみに本日(27日)行われた公開練習には、沖縄でGETしたという『ハブ粉』を持参!「滋養強壮に良いそうなので、これで頑張ります! なんかキャラちがうなぁ…」


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