山本“KID”徳郁がレスリング挑戦で注目を集めているが、所英男と闘う永田克彦は、すでにオリンピックでメダリストになっている。一体、メダリストはどれくらい強いのか。『OLYMPIA HERO'S 2007 開幕戦 〜名古屋初上陸〜』(3月12日、名古屋市総合体育館レインボーホール)で永田は、所を相手にそれを証明しようとしている。


僕もとんでないことをする


——今年、最初の試合になりますね。
永田 所選手との対戦が決まって、気持ち的に盛り上がっています。いい勝ち方をして、いいスタートにしたいですね。
——所選手のイメージは、どんなものがありますか?
永田 凄いことをしでかす選手ですね。それはいい意味でも、悪い意味でも(笑)。
——何をするか予想できないというのは、対戦相手にとって嫌なものなのでしょうね。
永田 そうですね。すごく予想外の攻撃をしてきますし、もちろんテクニックもすごいし、スタミナ、スピードもありますからね。本当にすごい選手だなと思います。
——とんでもないことをしてくると考えると…。
永田 逆に僕もとんでもないことをしようかな、と思っています(笑)。
——えっ! いったい何を…?
永田 予想もつかないことをしたいですね(ニヤリ)。
——これまでとは違った永田選手が見られると。
永田 もちろん、前回の試合より進化した姿を見せられると思います。
——前回の勝村周一朗戦は、打撃が向上したように見えました。自身では、どう考えていますか。
永田 そうですけど、まだまだだなとも思います。欲を言えば、きりがないと思いますけどね。
——イメージでは倒せた?
永田 いや、練習してきたことのなかでは出せたとは思うんです。でも、もっとレベルアップをしないといけません。そう思います。
——まだ全然、満足ではないと。
永田 もっと出したい、欲を言えば。理想とする技術はもっと高いです。
——それが100だとしたら、今はいくつなのでしょうか。
永田 まだ30くらいじゃないですかね? 本当に打撃のすごい選手ってヤバイじゃないですか。そこまで行かなくても、もっと凄いものは見せられるとは思うんです。


マヌーフの打撃力がほしい

——打撃ならメルヴィン・マヌーフ選手のようなレベルでしょうか。
永田 あれだけのパンチのラッシュや、回転力があったらレスリング力も活きると思います。あれは理想の理想みたいな感じですね。あれにタックル、テイクダウンの技術が加わったら、凄いものができると思いますよ。
——マヌーフ選手を基準にすると、永田選手の打撃は…。
永田 まだ全然です。彼はK-1のなかでもトップクラスだと思うんで、そういった選手に比べたら全然ですよ。でも、あそこまで打撃が強くなっちゃうと、自分の本来あるレスリングの良さもなくなっちゃうかもしれないですから。そのバランスを考えて、あそこまでならなくてもいいかもしれません。トータルで力が出ればいいんで。打撃の技術に関しては、K-1の選手クラスになる必要はないとは思うんですけど、もっともっと向上させていきたいです。
——練習は打撃、総合をどれくらいの比率でやられているのでしょうか。
永田 半々です。すべて同じくらいの比率なんですけど、レスリングは週に1回か2回くらいです。それだけでも昔、ずっとやっていたんで吸収しやすいです。感覚は戻りますし。打撃とかはやったことがないんで、週に3回くらいはやっています。
——大晦日の勝村戦が終わったあとも、練習は同じですか。
永田 もちろんです。年明け、ちょっとゆっくりしてから、3月に大会があると聞いていたんで、いつでもできるように体はずっと動かしていました。試合できるように準備はしてきました。
——所選手との試合のオファーが来たとき、率直にどう思いましたか?
永田 いよいよ来たかと思いました。デビュー戦の幻のカードだったんで。
——所選手の注意点は?
永田 なんて言うか…単純に総合格闘家としての経験とか技術は、僕より全然、キャリアがありますから。それに場数を踏んでいますから、それは相手の方が有利だと思います。身体能力では負けていないと思うし、勝負師としての経験は僕の方が長いと思います。そういったところで勝負したい。


下になったら僕の良さは出ない

——所選手のタックルは避けられると思うのですが。
永田 切れるとは思うんですけど、総合のなかでのタックルは違ってくるとは思うんです。どんな技でも、常に注意はしないといけないと思います。切れると思うよりは、それも相手のテクニックだと思って注意して切るようにします。切れるだろうと考えていたら、違ってくると思うんです。
——余裕はない?
永田 そういうわけじゃないですけど、総合のなかでちゃんと使っていく技だと思うんで、注意はしなくちゃいけないですよね。
——永田選手がテイクダウンを取られたり、下になる場面が想像できません。
永田 そうなったら自分の良さがあまりないと思うんで、下になりたくないですね(笑)。なりたくないというか、レスリングの選手はあまりならない方がいいんじゃないですかね。
——自信があるのでは?
永田 もちろん下にならない自信はありますけど、試合のなかでは何が起こるか分からない部分がありますから、気を引き締めてやりたいです。
——前回、勝村選手と闘っての感想は何かありますか。
永田 練習していたことが出せました。悔しい思いで頑張ってきたことが出せたんで、単純に嬉しかったです。勝村選手も技術がすごかったんで、いい試合ができたと思います。インパクトを残せたと思っています。
——勝村選手はかなり変則的なフェイントを使っていました。
永田 あそこまでしたのは、僕と試合をしたときが初めてなんじゃないですか(笑)。凄く体を揺らして、気合いが入っていましたよね。あれには驚きました。ただ、70kg契約なんですけど、僕の方が筋力、パワーは圧倒的にあるから、ああやってきたんだとは思いますけど。もしかしたら所選手もそうやってくるかも知れませんね(笑)。まぁ、どんな戦法で来ても対応できるように練習したいですね。


減量は余裕です

——実際、減量はどうでしたか。
永田 普通です。僕は減量、本当に得意なんですよ。
——よくあそこまで落とせますね。
永田 順調に落ちましたし、コンディションもよかったです。問題は全然なかったです。
——今は何kgですか。
永田 77kg…くらいですかね。また落とします。
——大丈夫なのでしょうか?
永田 毎回、言われるんですけど、レスリングの選手はこれが普通なんですよ。みんな7kg落とすのなんて、そうなんだくらいですよ。
——えぇ!!(驚)
永田 本当ですよ。60kg級の選手なんか、アジア大会とかで70kgから60kgに落とすんですよ。
——レスリング選手は体脂肪が少ないと思うんですけど、どこが落ちるのですか?
永田 水分です。筋肉が多いと水分が多いんです。脂肪は油じゃないですか。脂肪の多い人は、体脂肪は落ちやすいんですけど、水分は落ちにくいんですよ。筋肉の多い人は、水分が落ちやすいんですけど、体脂肪が落ちにくいんです。短い期間ですけどね。
——サウナなどですか?
永田 いや、1回の練習で2kgとか落ちるんです。今日も1リットルくらい水分飲みながら練習して、77kgから75kgまで落ちていましたね。
——試合前にちょっと水を抜けば…。
永田 入れる水分を少なくしながら、ダァーって汗をかくじゃないですか。食事も節制するんですけど、入れる水分も控えて、断続的に続けると大幅に落とせます。レスラーならではのテクニックです。
——余裕ですね。
永田 はい。いつものことか、くらいの感じです。いきなりやると要領が分からなくて失敗するんですけどね、栄養を取るタイミングだとか。僕らレスラーは、年に何回も仕上げて、高校、大学、社会人と十何年やってきたことですから。体に染み付いてます。


なぜかZSTの選手が相手になる

——前回、勝村選手が負けたことで、所選手はかなり気合いを入れてくると思います。
永田 最初、レミギウス・モリカビュチス選手、次に勝村選手ですからね。なぜか相手は、ZSTの選手ばかりなんですよ。だから今回は、並々ならぬ気合いが入っているとは思います。ただ自分もそれ以上の気迫で、オリンピックのメダリストは凄いんだ、というところを見せたいですね。いろいろと、すごいものを見せたいですよね。夢を与えると言ったら変なんですけど。勝村選手じゃないですけど、僕もレスリングを子供から大人まで教えているし、オリンピックを目指して欲しい気持ちはあります。オリンピックを目指す選手の凄さを見せたいと思います。
——現在、山本“KID”徳郁選手がオリンピックを目指しています。永田選手は逆にメダリストからHERO'Sに参戦して、レスリングを広めようとしています。
永田 当然、無様な試合は見せたくないですし、すごい勝ち方を見せたいですよね。
——これまでは順調にきていますか?
永田 順調に来ていますし、前回の試合よりも進化した姿を見せたいと思います。
——これから先の計画は。
永田 とりあえずミドル級を獲って目立ちたいですね。今年はトーナメントが一番、大きな目標なんで。それに向けていいスタートをこの試合で切りたいです。
——今後は、完全にミドル級で。
永田 僕の本来の階級ですからね。ここで勝負したいです。
——ミドル級はJ.Z.カルバン選手など、強豪が多いです。
永田 ヤバイですよね。やるにはまだまだ力不足だと思います。僕なんか、まだ総合を始めて1年半も経ってないくらいなんで、もっともっと経験を積んで太刀打ちできるようになりたいです。
——そこに立つことでレスリングの強さを証明できるということですか?
永田 僕には絶対、オリンピックのメダリストという肩書きが付くんです。勝つことによって、みんなが凄いと感じると思うんですよ。そしてみんなにメダリストの強さを見せて、オリンピックを目指して欲しいと思うのと同時に、レスリングの凄さを見せたいです。■

» 『OLYMPIA HERO'S 2007 開幕戦 〜名古屋初上陸〜』実施概要
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»  永田克彦:プロフィール


いつのまにか“ZSTハンター”となっている永田。次は所の首も狩るか!?

ph
「減量、本当に得意なんですよ」……超羨ましいセリフですが、素人には真似できません!!

ph
「僕もとんでもないことしようかな」とさわやかに語る永田。先に試合のペースを握るのはどっちだ!?

ph
恐ろしいほどの速さで進化を続ける永田が、名古屋大会でまた新たな一面を魅せる!?



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