桜庭選手という存在は大きい

──念願の桜庭戦が決定しました。今の心境から教えていただけますか。
船木 ホッとしました。これで本当に大晦日に出場できますし、今はそれに向けて最終スパートですね。
──そもそも船木選手が現役復帰を決めたのは、桜庭選手の存在があったからですよね。
船木 そうですね。柴田(勝頼)、田村(潔司)、桜庭選手の3人が復帰のキッカケを作ってくれた選手なんですけど、まず最初のキッカケとなったのは柴田の総合デビューですね。それでその次が、6月の『Dynamite!! USA』で桜庭選手が出られなくなった時の代わりにスタンバイしていた田村。そしてホイス・グレイシー選手と闘っている桜庭選手を放送席から見てですね。
──同世代の頑張りに影響を受けたと。
船木 受けましたね。彼らはそういうふうに自分のことをまったく見ていなかったと思うんですけど、自分は感じていました。
──「オレは放送席で解説をやっていていいのか?」と思ったんですね。
船木 そうです。なんか、もっと歳を取った人が若い選手たちの試合を解説するのはいいと思うんですけども、「なんでオレは同年代の選手の試合を解説しているんだろう?」っていう感覚ですね。それはやっぱり桜庭選手が去年HERO'Sに移籍してこなければ、そういったシチュエーションもありえなかったわけなんですよね。柴田が総合デビューしただけでは、「もう一回やろう」とは思わなかったですし、やっぱり桜庭選手という存在は大きいです。
──かつて桜庭選手がPRIDEのリング上で「フランク(・シャムロック)さんとやりたい」と発言したことを、マスコミも含め、多くの人間が「船木さんとやりたい」と聞き間違えたということがありましたよね。
船木 “フランクさん事件”ですね(笑)。その時、自分もペイ・パー・ビュー(以下、PPV)放送で見ていましたんで、「あ、言ったぁ!」と思いましたね。でも、その対戦を実現するにはクリアするべきハードルが当時にはあって、「PRIDEのリングでやるのか?」「パンクラスのリングでやるのか?」っていう問題もありましたし。
──結果、聞き間違いだったんですが、桜庭選手のその発言をPPVで聞いた瞬間はどう思いました?
船木 「あ、やりたい」とすぐに思いました。「桜庭選手とやりたい」って。
──それは当時の桜庭選手の活躍を見てですか?
船木 そうですね。最初に見たのは、UFC-Jのトーナメントで優勝した時(1997年12月21日)。それから桜庭選手の試合はずっと見ていますね。
──どういった印象を持っていましたか?
船木 やっぱり"巧い"ですね。打撃の選手を捕まえるタイミングとかも巧いし、グラウンドでのあり得ない形も桜庭選手だとあり得てしまう、という感覚がありますね。


回復力以外ははすべて以前よりも上がっています

──以前、船木選手は「桜庭戦は“UWFの清算”」と発言していましたが、もう少し詳しくお話していただけますか?
船木 今の総合の流れというのは、明らかにUWFから始まっていると思うんですよ。新日本プロレスからUWFというものができ上がって、UWFがいくつかに分かれた中の一つにパンクラスがあって。それで、それと同時にUFCというものも出てきて、日本ではUが分裂した後、PRIDEやHERO'Sという形になっていった。やっぱりすべての始まりはUWF以外には考えられないと思うんですよね。そういうものの締めくくりを、自分もUWFで、桜庭選手もUインターというUWF系からプロレスを始めた人間同士が行うと。そこには田村選手もいますしね。そういう実体験でUWFの闘いを体験してきた人間が今の総合格闘技というベースで闘って「どういう結果になるんだろう?」というのは、自分も見てみたいですから。自分が見てみたいってことは、他にも見てみたいという人がいると思います。正直、単純に言えばですね、「誰が一番強いのか?」。それで済むことですね。で、生き残った選手が若い世代の選手と闘っていけばいいと思うんですよ。それが桜庭選手なのか、田村選手なのか、自分なのか? それはまだ分かりませんけどね。
──7年ぶりの試合となりますが、7年前のヒクソン・グレイシー戦以前の船木選手と、現在の船木選手の一番の違いというのはどこだと思いますか?
船木 やっぱりカラダの使い方というか、闘い方が一番違うと思います。体力も今のほうがありますしね。ただ、一つだけ明らかに劣っているという部分は回復力です。回復力は遅くなっていると思いますね。でも、他はすべて以前よりも上がっています。
──悪い箇所もまったくないですか?
船木 まったくないですね。
──ちなみに、柴田選手のほうからは桜庭戦に関する言葉はありましたか?
船木 (練習パートナーとして)「できる限りのことをします」と。ただ、柴田も今回韓国で試合がありますから、それが終わってからになりますが(※このインタビューは韓国大会前に収録)。
──新しい船木誠勝のファイトスタイルが想像つかないというか、まるで見えてこないんですよ。
船木 ええ。そこが桜庭選手も一番イヤだなと思う部分だと思いますね。変わっているのは事実ですよ。でもここで、「ここがこう変わりました」ってバラしたくないです。それはもう当日を見ていただければと思います。過去と同じままで出てきても通用しないですから。
──進化していると。
船木 過去のままの自分であれば、まず練習で倒されていますよね。練習で歯が立たないと思います。でも、(歯が)立つからもう一回復活しようと思ったんです。


どちらかが倒されるか、落とされるか……

──9月の横浜大会で柴田選手のセコンドとして桜庭選手を間近でご覧になっていかがでしたか?
船木 すごくいい勉強になりましたね。いい材料収集になりました。あのような手堅い桜庭選手の試合って見たことなかったんで。ホントにあの時は桜庭選手は「負けられない!」という感覚で試合をしていたんだなあと思いますね。意外と動かなかったじゃないですか? そういう試合もできるんだなあというのが分かりました。でも、アレを大晦日に出されたらイヤだったですね。
──手応えは感じましたか?
船木 そうですね。注意をしなければいけない部分は何個か見つかって、絶対にそれを守らなきゃいけないですね。
──穴というか、弱点みたいな部分は?
船木 「こういうときには、こういう体勢になる」というクセは見つけましたね。あの時(柴田戦)の桜庭選手って、すごく集中していたと思うんですよ。集中している時に出る体の動きって、染み付いた動きしか出ないんで、それはすごく参考になりましたね。
──また、会見では「この試合を止められるのはレフェリーしかいない」と発言していました。
船木 それはやっぱり自分もそういう性格ですし、桜庭選手もおそらくそういう性格だと思いますから。「負けを譲らない」「敗北を認めない」っていうんですかね。
──それは即ち「絶対にタップはしない」と?
船木 はい。どちらかが倒されるか、落とされるか……。あとは関節が極まってレフェリーがストップするか。それしかないですね。あの、「桜庭が衰えた」という意見もありますけど、確かに衰えている部分もあるかもしれませんけど、進化している部分もいっぱいあるんですよ。それは見ていて感じますね。去年よりも今年のほうが調子良くなっていますから。彼はもう一回ピークがくるような気がしますね。
──それでは対戦相手の桜庭選手にメッセージをお願いします。
船木 2人にしかできない闘いをやって、今後の格闘技界の灯が消えないための闘いをしたいです。ぜひ、気持ちに応えてください。
──ファンの皆さんにもお願いします。
船木 7年ぶりにリングに上がることになりました。応援を続けてくれているファンの方にはすごくありがたいと思っています。その声援を常に背中に、皆さんの力になるような試合をしていきたいと思います。(ファイターとしては)そんなに長くはない、でもそんなに短くもないと思いますから、第二の人生的な生き方を皆さんと一緒に歩んでいきたいと思います。応援、よろしくお願いします。■

 

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「打撃の選手を捕まえるタイミングとかも巧いし、グラウンドでのあり得ない形も桜庭選手だとあり得てしまう」と桜庭の印象についてコメント


先月23日に行われた記者会見で顔を合わせた船木と桜庭
記者会見では「"魂のぶつかり合い"を桜庭選手とできたらいいなと思います」と語った船木
7年ぶりの復帰戦、UWFの清算──船木は桜庭を相手にどんなファイトを見せてくれるのか?

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