谷川代表「選手のモラルとして非常に遺憾」

 会見の冒頭、まずは谷川代表から、「大晦日に三崎選手と秋山選手が素晴らしい試合を行ってくれました。しかし、試合後、『最後の決まり手は反則か反則じゃないか?』という議論が起こりまして、秋山選手サイドからも『やれんのか!』実行委員会のほうに抗議をし、昨日結論が出ました。あくまで私個人の見解では、決まり手となったキックに関しては『反則だな』という気持ちはありましたが、『やれんのか!』の審判団のほうにお任せして、昨日、私も結果を見ました。最終的に『やれんのか!』の審判団が下したのは、『反則とも言えるし、アドバンテージとも言える』ということで、結果的にノーコンテストと。その結果に対し私個人は納得していますし、『やれんのか!』の審判団が一生懸命に対処してくれたことに感謝しています」と、ノーコンテストとなった三崎和雄vs秋山成勲の裁定についての感想が述べられた。

 さらに谷川代表は、「今、格闘技界というのは過去の反省をしてやっていかなければいけないと思います。反省というのは、“K-1対PRIDE”という、いい意味でも闘っていましたけど、選手の引き抜き合いという、お互いを傷つけ合いながら闘ってきた過去です。でも、今はもう、総合格闘技界はそういう状況ではありません。だからこそ大連立していこうと。その中で秋山選手と三崎選手の試合に関して、秋山選手はHERO’Sのチャンピオン、三崎選手はPRIDEのチャンピオン、これはお互いに背負っているものも大きいし、やってきたことも大きいので、試合前に『どっちが勝っても負けても、2試合やりましょう。再戦をやりましょう』というふうに、両選手に話しておりました。最初からそういう(再試合という)話が前提としてありました。そこで非常に残念なのは、三崎選手自身が、ブッキングを担当していた『やれんのか!』実行委員会にも言わないで、他団体に出ることになってしまったこと。これは選手のモラルとして非常に遺憾だなと思います。言葉は悪いですけど、ある意味、大きな舞台を利用して次につなげていく。選手個人、あるいはチームなのかもしれませんけど、これは非常にモラルに反することではないかなと思います。私個人の気持ちとしては、そういう選手に関しては、今後も含めて、断固たる態度を取っていきたいと思います。もちろん三崎選手と秋山選手の再戦というのは、約束していることだと思いますし、実現させていきたいと思います。ただ、それぞれ契約がありますから“他の団体に出てはいけない”とは思いませんが、こういうのが一番団体同士が揉める大きな要素なんです。いくらでもプロモーター同士で話し合いはできます。例えば、私たちが修斗のチャンピオンを使うときは、ちゃんと修斗にも話をさせていただいています。ZST、慧舟會、パンクラスでも同じです。そういうことをしながら他団体と揉めないように格闘技界を盛り上げていくというのが非常に重要だと思います。秋山選手は非常に大きなリスクを背負って、さいたまという敵地に上がって、あの観衆の中で闘いました。そういう思いを考えれば、選手としてのモラルを考えないとダメなんじゃないかな。……ということを、私は今日一番言いたかったんです」と、ノーコンテスト裁定となった三崎vs秋山の再戦の機運が高まる中、三崎の他団体出場に関して遺憾の意を示した。


秋山「結果は100%受け入れています」

 谷川代表に続いて秋山がコメント。秋山は報道陣に一礼すると、「昨日皆さんの元にもリリースが来たと思いますが、僕もそのリリースを見て、ノーコンテストということを知りました。当初リングに立った中では、すぐには判断できない部分もありました。リングを降りた後にいろんなことを考えて、そういう疑わしい事実があるんじゃないかと思い、ルールに基づいた上で2週間以内にそういう文書を出させていただきました。ファンの皆さんもそうですし、僕たち選手もそうですし、協議をされているレフェリーの方たちもそうですけど、その人たちがルールに基づいた上でしっかりと判断していただくことが次につながることだと思い、そして皆さんが納得いく満足できる信頼できる試合がこれから行われていけばいいんじゃないかという気持ちで、文書を提出させていただきました」と、『やれんのか!』実行委員会に提訴した理由について述べると、「ノーコンテストという結果は100%受け入れていますし、それがノーコンテストではなかった場合でも、それはそれでレフェリーにお任せしたジャッジですので、それを受け入れようと思っていました」と、裁定について納得したことを明かした。


秋山「マイクパフォーマンスをされているときに、“ちょっとおかしいんじゃないかな?”」

 谷川代表及び秋山のコメントに続いて、質疑応答が行われた。

【質疑応答】
──秋山選手にお聞きします。もし再戦することになったら、キッチリけじめをつけたいという気持ちはありますか? そして現在の怪我の状態はどのような状態でしょうか?
秋山 やはりノーコンテストというのは正直、私もそうですし三崎選手もそうですし、年末に試合を見られたファンの皆さんも全員しっくり来てないと思いますので、そういった部分に関してはスッキリさせたいという気持ちはあります。そして怪我の状況は、鼻の骨折とヒザの靱帯を怪我をしたわけなんですが、まだ全然完治していない状態で、時間はまだかかると思います。

──練習の再開はいつ頃と考えていますか?
秋山 怪我の回復次第になると思いますが、まだ寒い時期なので急に動かすと逆に良くないかなと思いますので少し暖かくなってからと考えていますが、それも怪我と相談して、無理をせず焦らずゆっくり前に進みたいと思います。

──谷川代表にお聞きします。三崎選手のモラルについてお話をされていましたが、それは三崎選手自身とお話しされたんですか? それとも『やれんのか!』陣営とのお話だったのでしょうか?

谷川 三崎選手のブッキングは『やれんのか!』実行委員会でやっていて、『やれんのか!』実行委員会の人たちが三崎選手と合意をして、その報を我々は聞きました。我々も秋山選手には『勝っても負けても2回やろうね』という話をして、秋山選手とも合意をしています。『やれんのか!』実行委員会は、三崎選手が他団体に上がることに対して『何も聞いていない!』と非常に憤慨をしていました。(他団体に)出るのは悪いことではないと思うんですけど、選手に関しては我々は一生懸命にドラマ作りをして、それで選手を育てようと、どんな選手に対してもそう思っているわけです。契約の問題はもちろんありますけど、ことわりというか、キチンと筋を通してもらいたい。そうしないとまた無法地帯になりますからね、格闘技界は。それを少し懸念しています。

──秋山選手から三崎選手に対して思うところはありますか?
秋山 谷川さんの言われたモラルというのはもちろん守らなければいけないことだと思うんですけど、三崎選手に関しては試合前にも言いましたが、素晴らしい選手だと思います。最後のキックに関しても、ルールに基づいたキックであったならば素晴らしいキックですし、自分も意識が吹き飛びそうになりました。ノーコンテストとなったことに関しては、スッキリしないところはスッキリしたいなと思います。

──ルールで許されていない攻撃で戦闘不能になりノーコンテストという結果になったわけですけど、“反則ならば、反則勝ちにならないか?”という思いはありませんか?
秋山 反則ならば反則勝ちというジャッジになるかとは思いますが、あのときはどっちとも取れる状況だったと思います。自分としては“あれは反則じゃないか?”という思いがあって抗議させていただきました。その結果、ノーコンテストということになって、それはレフェリーの方々がいろんな協議をしていただいた上での結果なので100%受け入れたいという姿勢でいました。ですので、「だから反則勝ちだろう」というのはありません。

谷川 私は、普段4点ポジションの蹴りを認めるルールに関して、“なるほど、そういう解釈もあるんだな”という、勉強させられた気持ちです。“反則勝ちにしてほしい”という気持ちはまったくないんですけど、一プロモーターとしては“今後どうするか?”ってことですよね。これからも『やれんのか!』実行委員会と大連立を続けていこうという中でお話をさせていただきますけど、今後4点ポジションを入れるのか入れないのか。もし入れた場合、「あれは反則負けにしよう」とか「反則勝ちにしよう」というのを課題として話し合わなければいけないなと思いました。あと、KID選手とハニ・ヤヒーラ選手の試合の最後のキックも、ヤヒーラ選手から抗議がありましたので、それも近日中にHERO’S審判団から出ます。

──秋山選手自身が“あのキックは反則だ”と認識したのは、どれくらいのタイミングだったんですか?
秋山 蹴られた瞬間とレフェリーが入った時にはすぐには判断できなかったんですけど、(三崎が)マイクパフォーマンスをされているときに、“(最後のキックは)ちょっとおかしいんじゃないかな?”と思ったんですが、なんかこう、そういうことは言い出せない状況だったので、もちろん鼻の怪我とかもあって、まずその鼻の状況も知りたかったですし、感情的になってしまって揉めるのはよくないとも思いましたし、少し落ち着いてビデオを見て、しっかりいろんな人の話を聞いてからと思っていました。

──谷川代表から「秋山選手は抗議することを遠慮していた、ためらっていた」ということをお聞きしたんですけど、それは事実ですか?
秋山 はい、それは事実です。もちろん皆さんご存じの通り、一昨年のノーコンテストということに関しては自分が起こしたことなので、周りの人から「お前もやったじゃないか」「なんでお前が言うねん」ということを言われるんじゃないかなということも、正直、ありました。それも踏まえて、自分個人の意見ではなくて、問題提起として自分が何かのお役に立てればと思っているときに、最終的に谷川さんからそういうふうに言っていただいたので、抗議に踏み切りました。


2月中に今後のイベントについて発表

 谷川代表は、記者会見終了後の囲み取材でも三崎の他団体参戦について、「ボクシングでもそうですけど、大きな対戦についてはリマッチがあります。それぐらい大きな試合だったということを、秋山選手もそうですし三崎選手も思わないと、他の選手も含めて、PRIDEファンとかHERO’Sファンに対して失礼ですよ。そんな簡単なもんじゃないですよ。ましてチャンピオンなわけですから」と、憤慨しきり。「私個人では決められませんけど、そういう選手を簡単にまた使うのも問題だなという思いもありますね。“ああ、許されるんだ”と思われても困る」と言い放った。

 しかし、秋山は会見終了後、FEG広報を通じ、「再戦するならば、韓国ではなくて、同じ場所、お客さんの前で試合をしたい」とコメント。あくまで再戦には前向きである姿勢を見せていた。

 なお、気になる2008年第一弾のイベントについて谷川代表は、「2・2K-1 MAX終わりくらいまでに、キチンと『やれんのか!』実行委員会の人たちと話し合って、どういう形で行うのか発表します。とにかく今年は総合格闘技はまた盛り返しますから。『やれんのか!』のスタッフの人たちは優秀なスタッフ。すごくいいイベントを作るべく、話を進めていきたいと思います」と明言。日本総合格闘技界の更なる盛り上がりを約束した。■

 

»『FieLDS やれんのか!大晦日!2007 Supported by M-1 GLOBAL』大会結果

昨日『やれんのか!』実行委員会から発表された三崎和雄vs秋山成勲ノーコンテスト裁定を受け、秋山成勲と谷川貞治FEG代表が緊急記者会見


「非常に残念なのは、三崎選手自身が、『やれんのか!』実行委員会にも言わないで、他団体に出ることになってしまったこと」と、三崎の選手としてのモラルについて言及した谷川代表

秋山は、「ノーコンテストという結果は100%受け入れています」と、裁定について納得したことを強調した

「私もそうですし三崎選手もそうですし、ファンの皆さんも全員しっくり来てないと思いますので、そういった部分に関してはスッキリさせたい」と再戦を希望した

記者会見には多くの報道陣が詰めかけた
「2・2K-1 MAX終わりくらいまでに、キチンと『やれんのか!』実行委員会の人たちと話し合って、どういう形で行うのか発表します」と谷川代表

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